賃貸経営ニュース「和楽」第323号に弊社代表が掲載されました。

「かぼちゃの馬車」運営 (株)スマートデイズの経営破綻に関して、

弊社代表取締役 鳥井がインタビューを受けました。

5号

以下記事本文↓

「かぼちゃの馬車」運営 (株)スマートデイズ 経営破綻

副題:首都圏を中心とした女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」を展開する株式会社スマートデイズが4月9日、東京地裁に民事再生法の適用を申請しました。3月末現在で債権者は911人、負債総額は60億を超え、自己破産するオーナーさんもいます。今月号では、シェアハウスの運営会社である株式会社クロスハウス 代表取締役 鳥井淳史様に伺いました。

手塚:去年からすでに問題が表面化していた「かぼちゃの馬車」ですが、ついに経営破綻となりました。運営会社である(株)スマートデイズがオーナーへのサブリース賃料の支払い停止を発表し、毎月100万円前後のローン返済があるオーナーらが、同社や関連会社などを相手取って損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こしたところでした。

御社も都内にシェアハウスを展開され、同社の物件の一部の管理運営を引き継いでおられますが、今回の件について、問題点を教えて頂けないでしょうか。

破綻したビジネスモデル

鳥井:スマートデイズさんは4~5年ほど前にシェアハウス事業を始めたのですが、このような問題になった原因は、賃料の設定を一般市場よりもかなり高額に設定していたこと、そして、シェアハウスの運営そのもので利益を上げるのではなく、キャッシュポイントを売買に置いて、物件の建築・販売の部分で利益を上げていたことだと思います。

通常のシェアハウスは、既存の建物をオーナーさんにリノベーションしてもらい、それを運営会社が一括で借上げ、シェアハウスとして客付けします。オーナーさんには毎月サブリース料が運営会社から支払われ、入居者からの賃料とサブリース料金の差益が運営会社の利益になるわけです。

ところが、スマートデイズさんは土地を仕入れて関連会社の建設会社でシェアハウスを建て、利回り8%ほどの収益物件として高額な価格でオーナーさんに売却。それを一括で借上げ、高額のサブリース料金を30年間保証するというやり方をとっていました。特徴的なのは、賃料を相場より2~3割も高く設定していた点です。我々が査定すると1室あたり3~4万円にするところ、彼らは5~6万円で賃料設定しています。家賃7万円のシェアハウスが10室あれば満室稼働で賃料収入は70万円になりますが、矛盾しているのが、オーナーさんにはそれより高い金額を保証していたところです。要は、満室でも赤字というわけです。では、そのお金はどこからくるのかというと、物件を高く売却した利益から補填していたわけです。例えば、市場価格では7千万円程度の物件を1億2~3千万円で売却し、その利益でサブリース料の赤字を穴埋めしていたということです。

手塚:土地と建物をセットで投資家に販売することで利益が生まれ、それを賃料に回して運営していたのですね。高額な値段で売るために、賃料保証額を高く設定していた。プロが見れば、明らかに破綻するビジネスモデルだったということでしょうか。

鳥井:そうですね。シェアハウス業界では、かぼちゃの馬車は悪い意味で有名でした。当時はまだシェアハウスが普及していなかったので、彼らもよく分からないままこのスキームをつくってしまったのかもしれません。スマートデイズさんの担当者と話したことがありますが、こんなやり方では破綻すると忠告する人もいたそうです。満室経営ならばもう少し持続したと思いますが、破綻して蓋を開けてみると、5割くらいの稼働でした。

手塚:家賃相場からかけ離れた賃料設定に騙されて契約した方が多かったんですね。

鳥井:特に、スマートデイズさんは、都内でも郊外の物件を多く運営していました。物件を買うオーナーさんは、地方の投資家で東京のことをあまりよく知らないため、東京でシェアハウスのオーナーになれると思って買ってしまったのでしょう。人気のエリアならば、それなりに高い賃料でも入居する人はいたでしょうが。

他にも、地方から上京してきた入居者さんを派遣会社に斡旋して、その派遣会社から紹介料をもらっていたようですが、こちらの方もうまくいかなかったようですね。

そもそも建て続けなければ回らないという、まさに自転車操業だったのですが、今年に入ってスルガ銀行がシェアハウスに関する融資をストップしたことで建築・販売ができなくなり、キャッシュフローが回らずサブリース料の補填ができなくなりました。

スルガ銀行に金融庁の立ち入り検査、融資を受けるため書類を改ざん

手塚:4月13日に、金融庁がスルガ銀行への立ち入り検査に着手したという報道がありました。かぼちゃの馬車の大半のオーナーに対しスルガ銀行が融資しており、改ざんされた書類をもとに融資を審査していたケースが多いとみられています。スルガ銀行側の審査体制や不正認識の有無などが現在調査されており、問題が判明すれば行政処分も検討するとのことです。

鳥井:スルガ銀行の貸付も以前から問題視されていました。スルガ銀行の店舗内でスマートデイズさんがシェアハウスの経営セミナーを開催していたそうです。これでは信頼度が増しますよね。

手塚:銀行がこの事業にお墨付きを与えているようにも見えますね。書類の改ざんは販売会社がしていたのでしょうか。

鳥井:スマートデイズ側の販売会社が勝手に偽造しているケースもありますが、オーナーさんが自ら書き直していたのもあったようです。融資の審査が通るように、例えば銀行口座の残高を30万円から3000万円にしたとか。銀行が見抜けないのもどうかとは思っていますが、今後の調査で明らかにされていくでしょう。

手塚:カボチャの馬車の物件は、入居者同士がコミュニケーションをとれる場所がなかったと聞いていますが、これも入居率が改善されない一因だったのでしょうか。

鳥井:それは関係ないと思います。確かに、コミュニティを求めて来るユーザーさんもいますが、シェアハウスの特徴は初期費用が安いことです。家具付きで初期費用が安くて家賃も低価格だからニーズも多いのです。コミュニケーションがとれないから失敗したのではありません。そもそも破綻モデルだったということです。実際、弊社でもかぼちゃの馬車のオーナーさんの物件管理を受けていますが、かなりの客付はできています。

スマートデイズからの物件を引き継ぐ

手塚:かぼちゃの馬車のオーナーさんの中には自己破産した方もいると聞いています。売却しても、購入金額よりはるかに安い金額になるでしょうから残債は数千万円になるでしょう。

御社ではスマートデイズの物件について多くのご相談が寄せられていますね。私共もオーナーさんから相談を受けて、鳥井社長にご相談させて頂きました。その方は4物件を保有されていましたが、フルローンでの借入だったので今後のことを本当に心配されていました。御社を紹介したらすぐに切り替えの手続きをして入居者を決めて頂いたので安心されていました。

鳥井:スマートデイズさんが運営していたシェアハウスは約800棟、それ以外にも同じスキームの会社が何社もありますので、併せると1000棟以上あると思います。

いずれにしろ、従来の契約は賃料設定が高すぎるため、同じ条件で受けることはできません。弊社の場合は一括借り上げではなく、入居者が入ればその何パーセントを管理手数料として頂くという一般的な管理受託という形で受けています。

手塚:ありがとうございました。今月号では問題となった「かぼちゃの馬車」について伺いましたが、来月号では引き続き鳥井社長にクロスハウスさんが展開するシェアハウスについて伺います。