社員寮を用意するとき、寄宿舎規則は必要なのでしょうか。作成・届出が要る場合と、書く内容を解説します。
- 寄宿舎規則は、社員寮が労働基準法の「事業の附属寄宿舎」にあたるときに作成し、所轄の労働基準監督署長へ届け出る規則です(労働基準法95条)。人数の下限はありません。
- あたるかどうかは、相当人数が共同生活の実態をもって住んでいるか、事業の運営上の必要から事業場の近くに設けているか、で総合的に判断されます(昭和23年 基発508号)。
- 書く事項は、起床・就寝・外出・外泊/行事/食事/安全と衛生/建物と設備の管理、の5つです。前の4つは寮に住む労働者の過半数を代表する人の同意が要ります。
- 外出や外泊を会社の承認制にすること、行事への参加を強制することは禁じられています。寮生活の自治にも口を出せません。
- 社宅のように各自が独立した生活を営むものや、福利厚生として設けたアパート式の寮は、事業の附属寄宿舎に含まれないとされています。
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社員寮・社宅の手配を相談する寄宿舎規則とは:労働基準法95条で作成と届出が決められた寮のルール
寄宿舎規則は、会社が「事業の附属寄宿舎」に労働者を住まわせるときに作る、寮生活のルールです。労働基準法95条は、寄宿舎に労働者を寄宿させる使用者に対し、決められた事項について寄宿舎規則を作成し、行政官庁に届け出ることを求めています。内容を変えたときも届出が必要です。
寄宿舎規則は就業規則とは別のものです。就業規則が仕事のルールであるのに対し、寄宿舎規則は寮に住む人の生活のルールを定めます。そのため、作成の手続きにも、寮に住む労働者の同意を得るという独自の決まりがあります。
| 項目 | 寄宿舎規則 | 就業規則 |
|---|---|---|
| 根拠 | 労働基準法95条 | 労働基準法89条 |
| 作成が必要な場合 | 事業の附属寄宿舎に労働者を住まわせるとき(人数の下限なし) | 常時10人以上の労働者を使う事業場 |
| 決める内容 | 起床・就寝・外出・外泊、行事、食事、安全と衛生、建物と設備の管理 | 労働時間、賃金、退職など働き方のルール |
| 労働者側の関与 | 生活に関する4項目は、寮に住む労働者の過半数代表の同意が必要 | 労働者の過半数代表の意見を聴く |
| 届出先 | 所轄の労働基準監督署長 | 所轄の労働基準監督署長 |
社員寮が「事業の附属寄宿舎」にあたるかの判断基準
寄宿舎規則が必要になるのは、寮が「事業の附属寄宿舎」にあたる場合だけです。範囲は、昭和23年3月30日の通達(基発508号)で示されています(全文は福井労働局の参考資料に掲載)。通達では、次の2つの条件をどちらも満たすものが事業の附属寄宿舎になるとしています。
| 条件 | 判断のポイント(通達の基準を総合して判断) |
|---|---|
| ① 寄宿舎であること | ・相当人数の労働者が泊まっているか ・独立した、または区画された施設か ・共同生活の実態があるか。トイレや炊事場、浴室が共同というだけでなく、一定の規律や制限のもとで起居寝食を共にしているか |
| ② 事業に附属していること | ・住んでいる労働者に、労務管理のうえで共同生活が求められているか ・事業場の中、またはその近くにあるか |
通達は同時に、あてはまらないものも示しています。社宅のように労働者がそれぞれ独立した生活を営むもの、少人数の労働者が事業主の家族と生活を共にする住み込み、そして福利厚生施設として設けたアパート式の寄宿舎は、事業の附属寄宿舎に含まれません。
判断の目安
| 寮・社宅の形 | あたるか(目安) | 主に使うルール |
|---|---|---|
| 工場や現場の近くに会社が設け、相部屋や共同の食堂で暮らし、会社が生活の規律を定める寮 | あたる可能性が高い | 寄宿舎規則(届出が必要) |
| 賃貸の部屋を1室ずつ会社名義で借り、社員がそれぞれ暮らす借り上げ社宅 | 一般にあたらない | 社宅規程 |
| 福利厚生として用意した、各部屋で独立して暮らすアパート式の寮 | 通達ではあたらないとされる | 社宅規程・入居のルール |
ここでの「目安」は通達の基準を当てはめた一般的な考え方です。同じ建物でも、会社が共同生活を求めているか、生活の規律を設けているかといった実態で判断が変わります。迷う場合は、事業場を管轄する労働基準監督署に確認してください。
借り上げ社宅で入居のルールを決める方法は「社宅のルールはどう決める?」、寮と社宅の違いは「寮と社宅の違いとは?」で解説しています。
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寮・社宅の運用について相談する寄宿舎規則に書く5つの事項
労働基準法95条1項は、寄宿舎規則で定める事項を5つ挙げています。このうち1〜4は、寮に住む労働者の過半数を代表する人の同意を得て作成・変更します(同条2項)。
| 事項 | 書く内容の例 | 同意 |
|---|---|---|
| 1. 起床・就寝・外出・外泊 | 起床と就寝の時刻の目安、外出・外泊時の連絡のしかた | 必要 |
| 2. 行事 | 寮で行う行事の内容と、参加は任意であること | 必要 |
| 3. 食事 | 食事の提供の有無、時間、費用 | 必要 |
| 4. 安全と衛生 | 火気の取り扱い、避難経路、掃除や消毒の決まり | 必要 |
| 5. 建物と設備の管理 | 共用部の使い方、設備が壊れたときの連絡先 | 不要 |
書いてはいけないこと:私生活の自由を侵すルール
労働基準法94条は、寮に住む労働者の私生活の自由を侵すことを禁じ、寮長や室長など自治のための役員の選任に会社が口を出すことも禁じています。事業附属寄宿舎規程4条は、私生活の自由を侵す行為として次の3つを挙げています。
- 外出や外泊について、会社の承認を受けさせること
- 教育・娯楽などの行事への参加を強制すること
- 共同の利益を害する場所と時間を除き、面会の自由を制限すること
たとえば「外泊は事前に会社の許可を得ること」という規則は、事業の附属寄宿舎では認められません。外出・外泊について定めるなら、連絡のしかたなど共同生活に必要な範囲にとどめます。こうした決まりが守られていない場合、労働者は労働基準監督署に申告できます(労働基準法104条)。
作成から届出までの流れ
| 手順 | やること | 根拠 |
|---|---|---|
| 1. 案を作る | 5つの事項について規則の案を作る | 労働基準法95条1項 |
| 2. 案を知らせる | 作成や変更の案を、あらかじめ寮に住む労働者に知らせる | 事業附属寄宿舎規程2条 |
| 3. 同意を得る | 1〜4の事項について、寮に住む労働者の過半数を代表する人の同意を得る | 労働基準法95条2項 |
| 4. 届け出る | 所轄の労働基準監督署長に、規則の届・同意書(代表者の氏名を記載)・規則本文を出す | 労働基準法95条3項、規程1条の2 |
| 5. 入寮時に示す | 寮に入る労働者に寄宿舎規則を示す | 事業附属寄宿舎規程3条 |
会社と寮に住む労働者は、どちらも寄宿舎規則を守らなければなりません(95条4項)。届け出た規則を変えるときは、同じ手順で同意を得て届け出直します。
寮を建てる・移す・変えるときの届出
常時10人以上の労働者を就業させる事業や、危険・有害な事業の附属寄宿舎を設置・移転・変更するときは、工事に着手する14日前までに計画を労働基準監督署長に届け出ます(労働基準法96条の2)。届書には、周囲の状況を示す図面と、各階の平面図・断面図を添えます(事業附属寄宿舎規程3条の2)。
寄宿舎の設備の基準(事業附属寄宿舎規程)
事業の附属寄宿舎には、換気・採光・照明・保温・避難・定員などについて、労働者の健康と安全を守る措置が求められます(労働基準法96条)。具体的な基準は事業附属寄宿舎規程にあり、住まわせる期間で2つに分かれます。
| 区分 | 対象 | 主な基準 |
|---|---|---|
| 第一種寄宿舎 | 労働者を6か月以上住まわせる寄宿舎 | 寝室は1人2.5㎡以上(床の間・押入を除く)・1室16人以下/寝室は原則として地下・3階以上に置かない/男女は原則として別の棟(完全に区画し出入口を分ければ可)/常時30人以上なら食堂、常時50人以上なら休養室 |
| 第二種寄宿舎 | 6か月に満たない期間住まわせる寄宿舎など | 寝室は1人2.5㎡以上・1室50人以下/出入口を2か所以上/採光・採暖の設備 |
外国人材を受け入れる場合は、この基準とは別に在留資格ごとの住居の基準があります。技能実習は「技能実習生の宿舎基準とは?」、特定技能は「特定技能外国人の住居基準まとめ」、育成就労は「育成就労制度の住居基準とは?」で整理しています。
建設業で、工事の完了の時期が予定されている事業の附属寄宿舎には、事業附属寄宿舎規程ではなく建設業附属寄宿舎規程が適用されます。
寮を持たずに住まいを用意する方法
寄宿舎規則の作成・届出に加え、設備の基準を満たした建物の維持、入退寮の管理、規則の見直しまでを自社で続けるのは、人事・総務にとって小さくない負担です。入居者が少ない時期も建物の費用はかかり続けます。
必要な人数分の部屋を賃貸で借りて社員に貸す借り上げ社宅なら、建物を保有せずに住まいを用意できます。各自が独立して暮らす形であれば、ルールは社宅規程で決めるのが一般的です(判断は実態によります)。制度の作り方は「社宅制度の作り方」、費用の比較は「社員寮の費用相場はいくら?」をご覧ください。
クロスハウスは11都道府県で3,000室以上の家具家電付き賃貸・シェアハウスを運営し、1室から法人契約ができます。法人契約では保証会社への加入が原則不要です。寮の代わりにシェアハウスの個室を使う方法は「シェアハウスは社宅にできる?」で解説しています。
シェアハウスを一棟まとめて借り上げ、会社が共同生活を求めたり起床・就寝などの規律を設けたりして寮として運用する場合は、事業の附属寄宿舎にあたる可能性があります。運用の形を決める前に、所轄の労働基準監督署に確認してください。
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社宅の運用負担を減らす方法を相談するよくある質問
- 寄宿舎規則は、寮に何人住んでいたら必要ですか?
-
労働基準法95条には人数の下限がありません。社員寮が「事業の附属寄宿舎」にあたれば、住んでいる人数にかかわらず作成と届出が必要です。一方、寄宿舎を設置・移転・変更するときの工事計画の届出(96条の2)は、常時10人以上の労働者を就業させる事業や、危険・有害な事業の寄宿舎が対象です。
- 寄宿舎規則と就業規則は別に作るのですか?
-
別に作ります。就業規則は働き方のルールで、労働基準法89条にもとづき常時10人以上の労働者を使う事業場で作成します。寄宿舎規則は寮での生活のルールで、95条にもとづき作成し、起床・就寝・外出・外泊、行事、食事、安全と衛生の項目については、寮に住む労働者の過半数を代表する人の同意を得て、その同意書を添えて届け出ます。
- 寮の門限や外泊の許可制を決めてもよいですか?
-
事業の附属寄宿舎では、外出や外泊について会社の承認を受けさせることは禁じられています(事業附属寄宿舎規程4条)。寄宿舎規則で外出・外泊について定めることはできますが、許可制にはできません。共同生活に必要な範囲のルールにとどめ、内容は寮に住む人の過半数代表の同意を得て決めます。
- 借り上げ社宅にも寄宿舎規則は必要ですか?
-
通達(昭和23年 基発508号)では、社宅のように労働者がそれぞれ独立した生活を営むものや、福利厚生施設として設けたアパート式の寮は、事業の附属寄宿舎に含まれないとされています。賃貸の部屋を1室ずつ会社名義で借りる借り上げ社宅はこの形に近く、寄宿舎規則ではなく社宅規程で入居のルールを定めるのが一般的です。該当するかは実態で判断されるため、迷う場合は所轄の労働基準監督署に確認してください。
- 寄宿舎規則の届出は、どこに何を出しますか?
-
事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に、寄宿舎規則の届、寮に住む労働者の過半数を代表する人の同意書(氏名を記載したもの)、寄宿舎規則の本文を出します(事業附属寄宿舎規程1条の2)。規則を変えたときも同じように届け出ます。窓口への持参のほか、郵送や電子申請(e-Gov)でも出せます。
- 寄宿舎規則を届け出ないと、罰則はありますか?
-
あります。寄宿舎規則の作成・届出(95条1項)や、同意の手続き(同条2項)に違反すると、30万円以下の罰金の対象です(労働基準法120条)。換気・採光・避難などの設備や安全衛生の措置(96条)に違反した場合は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になります(119条)。
本記事は、寄宿舎規則に関する一般的な考え方を紹介したものです。個別の寮が事業の附属寄宿舎にあたるか、届出が必要かは、所轄の労働基準監督署または社会保険労務士にご確認ください。内容は2026年10月時点の労働基準法、事業附属寄宿舎規程、昭和23年3月30日 基発508号によります。
まとめ
社員寮が、共同生活の実態があり事業の運営上の必要から設けた「事業の附属寄宿舎」にあたる場合は、起床・就寝・外出・外泊、行事、食事、安全と衛生、建物と設備の管理の5項目で寄宿舎規則を作り、寮に住む労働者の過半数代表の同意を得て、所轄の労働基準監督署長に届け出ます。外出・外泊の承認制や行事の強制はできません。一方、各自が独立して暮らす借り上げ社宅や福利厚生のアパート式の寮は、通達で事業の附属寄宿舎に含まれないとされ、ルールは社宅規程で決めるのが一般的です。寮の運営そのものを減らしたい場合は、1室から借りられる社宅も選択肢になります。社員寮・社宅の手配はお問い合わせフォームからご相談ください。
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