借り上げ社宅の火災保険は、会社と従業員のどちらが入るのでしょうか。補償ごとの分け方と、保険料の課税の扱いを解説します。
- 賃貸の火災保険は、①大家への賠償(借家人賠償責任)②従業員の持ち物(家財)③近隣など第三者への賠償(個人賠償責任)の3つに分けて考えると整理できます。
- 借り上げ社宅で大家と賃貸借契約を結んでいるのは会社です。大家への賠償に備える借家人賠償責任は、借主である会社の責任に備えるものです。加入の要否や加入者は、賃貸借契約書で指定されるのが一般的です。
- 家財は従業員本人の財産です。会社が契約者となり、従業員全員を対象に家財を保険の目的とする損害保険をかけた場合、その保険料は従業員の給与として課税しなくて差し支えないとされています(所得税基本通達36-31の7)。
- 従業員が自分で契約した保険の保険料を会社が負担すると、原則として給与になります(同36-31の8)。役員や特定の従業員だけを対象にした場合も給与です。
- 誰が入り、誰が払うか、保険料を給与から天引きするかは、社宅規程に書いておくと入居のたびに迷いません。
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社宅の手配について相談する賃貸の火災保険は3つの補償でできている
賃貸住宅の入居時に加入する「火災保険」は、名前は1つでも、中身は性格の違う3つの補償の組み合わせです。借り上げ社宅で誰が入るかを決めるには、まずこの3つを分けて考えます。
| 補償 | 何に備えるか | 誰の財産・責任か |
|---|---|---|
| 借家人賠償責任 | 火災・破裂・爆発・水漏れなどで借りている部屋を損傷させ、大家に賠償するとき | 借主(借り上げ社宅では会社) |
| 家財 | 入居者の家具・家電・衣類などが火災や水漏れ、盗難などで損害を受けたとき | 入居者(従業員) |
| 個人賠償責任 | 日常生活で他人にけがをさせたり、下の階に水漏れさせたりして賠償するとき | 入居者(従業員) |
補償の範囲や名称は保険会社・商品によって異なります。賃貸住宅向けの保険では、家財の補償に借家人賠償責任や個人賠償責任を特約として付ける形が多く見られます。
隣家への延焼と、大家への責任は別に考える
失火責任法は、失火で他人に損害を与えても、重大な過失がなければ不法行為の賠償責任を負わないと定めています。そのため、隣の建物に燃え移っても、重大な過失がなければ隣家への賠償責任は問われないのが原則です。
一方、大家との関係は賃貸借契約にもとづきます。借主は、借りた部屋を善良な管理者の注意をもって保管し(民法400条)、契約が終わったときは借主の責めによる損傷を元に戻す義務を負います(同621条)。失火責任法が免除するのは不法行為の責任なので、借主の不注意で部屋を焼いてしまった場合、大家への契約上の責任は残ると考えられています。借家人賠償責任は、この責任に備える補償です。
借り上げ社宅では誰が入る?契約者で考える
借り上げ社宅は、会社が借主として大家と賃貸借契約を結び、その部屋を従業員に貸す形です。大家から見た借主は会社なので、保険も「誰の責任・誰の財産か」で入る人を決めると筋が通ります。
| 補償 | 加入者の考え方 | 契約書で確認すること |
|---|---|---|
| 借家人賠償責任 | 借主である会社の責任に備えるもの。会社名義で加入するか、契約書の指定により入居者(従業員)名義で加入する | 保険の加入が条件か/加入者・保険会社の指定があるか/補償額の下限 |
| 家財 | 従業員の財産なので本人の判断が基本。会社が福利厚生として全員分を用意する方法もある | 家財の補償が加入条件に含まれているか |
| 個人賠償責任 | 従業員の日常生活での責任なので本人の判断が基本。家財の補償の特約で付けることが多い | 特約の有無・補償額 |
実務では、賃貸借契約書や重要事項説明で「借主は火災保険に加入すること」と指定され、加入する保険会社が決まっていることもあります。借主が会社なら、会社名義で加入するのが自然です。物件によっては入居者名義での加入を求められることもあるため、契約前に確認しておきます。
入居者名義で加入した保険の保険料を会社が負担すると、従業員への給与として扱われる場合があります。次の章で整理します。
法人契約で賃貸を借りるときの流れと必要書類は「法人契約で賃貸を借りる方法」、借り上げ社宅の仕組みは「借り上げ社宅とは?」で解説しています。
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法人契約の社宅について相談する会社が保険料を負担したときの課税の扱い
会社が従業員のために保険料を払うと、その分が従業員の経済的利益として給与課税されるかが問題になります。所得税基本通達は、契約の形によって次のように扱いを分けています。
| 保険の契約の形 | 課税の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 会社が契約者となり、従業員全員を対象に、家財などを保険の目的とする損害保険をかける | 課税しなくて差し支えない | 所得税基本通達36-31の7 |
| 上と同じ契約で、役員や特定の従業員だけを対象にする | 保険料に相当する額が給与になる | 同36-31の7ただし書 |
| 従業員が自分で契約した損害保険の保険料を会社が負担する | 給与になる | 同36-31の8 |
| 従業員が契約した保険の保険料などを、全員を対象に負担し、1人あたり月300円以下 | 課税しなくて差し支えない | 同36-32 |
36-31の7が対象にしているのは、従業員の住まいの家屋や家財(地震保険料控除の対象になる生活用の家屋・資産)を保険の目的とする損害保険です。借り上げ社宅の建物は大家の所有なので、従業員に関係するのは主に家財の補償です。
借家人賠償責任は、会社が借主として大家に負う責任に備える保険です。会社が会社名義で加入して保険料を払う場合は、会社自身の費用として処理するのが一般的です。保険料を従業員の負担にして給与から天引きする場合は、社宅使用料と同じく、労使協定で控除項目として定めておく必要があります。天引きの手続きは「社宅の家賃はどう決める?」で解説しています。
課税の扱いは、契約者・被保険者・保険金の受取人や、満期返戻金の有無によって変わります。積立型の保険や、役員を含む制度を設計する場合は、税理士に確認してください。
社宅規程に書いておくこと
保険の扱いが決まっていないと、入居のたびに「この保険は誰が入るのか」「保険料は誰が払うのか」を個別に判断することになります。社宅規程に次の項目を書いておくと、手配する担当者が替わっても扱いがぶれません。
- 会社が用意する補償(借家人賠償責任・家財・個人賠償責任のどれか)と、加入者の名義
- 保険料の負担者と、従業員負担にする場合の金額・天引きの有無
- 事故が起きたときの連絡先と手順(会社・管理会社・保険会社のどこに先に連絡するか)
- 保険で補償されない損害が出たときの、会社と従業員の負担の考え方
- 退去・退職・転勤のときの保険の解約や名義変更の手続き
社宅規程の作り方は「社宅のルールはどう決める?」、退去時の原状回復の費用負担は「借り上げ社宅の退去費用は誰が払う?」をご覧ください。
家具家電付きの社宅で気をつけること
家具家電付きの部屋では、備え付けの家具家電は貸主の設備で、従業員の家財ではありません。従業員が持ち込む家財は、衣類やパソコン、身の回りの品が中心になります。家財の補償を用意するときは、どの範囲を守るのかを決めてから補償額を選ぶと、過不足が出にくくなります。
備え付けの家具家電を壊してしまったときの扱いは、賃貸借契約書の定めによります。入居前に、設備の故障・破損の連絡先と費用負担を確認しておきます。家具家電付き賃貸を社宅に使うときのコストと選び方は「法人向け家具家電付き賃貸ガイド」で解説しています。
クロスハウスは11都道府県で3,000室以上の家具家電付き賃貸・シェアハウスを運営し、1室から法人契約ができます。法人契約では保証会社への加入が原則不要です。入居に必要な保険の条件も、物件ごとに契約前にご案内します。
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家具家電付きの社宅について相談するよくある質問
- 借り上げ社宅の火災保険は、会社と従業員のどちらが入りますか?
-
補償ごとに考えます。大家への賠償に備える借家人賠償責任は、賃貸借契約の借主である会社の責任に備えるものなので、会社が加入するか、契約書で入居者の加入が求められていればその指定に従います。従業員の持ち物を守る家財の補償と、日常生活で第三者に損害を与えたときの個人賠償責任は、従業員本人の財産と責任に関わるものです。会社がどこまで用意するかを社宅規程で決めておきます。
- 社宅の火災保険料を会社が払うと、従業員に課税されますか?
-
契約の形で変わります。会社が契約者となり、従業員全員を対象に家財などを保険の目的とする損害保険をかけた場合は、課税しなくて差し支えないとされています(所得税基本通達36-31の7)。従業員が自分で契約した保険の保険料を会社が負担した場合は、原則として給与になります(同36-31の8)。ただし、全員を対象にした負担で、1人あたりの月の負担額が300円以下なら課税しなくて差し支えないとされています(同36-32)。
- 会社が借家人賠償責任保険に入っていれば、従業員の家財も補償されますか?
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借家人賠償責任は、借りている部屋を火災などで損傷させたときに大家へ負う賠償に備えるもので、従業員の持ち物の損害は対象外です。衣類やパソコンなどの家財を守るには、家財を保険の目的とする補償が別に必要です。会社で用意しない場合は、従業員が自分で入るかどうかを判断できるよう、入居時に案内しておくと親切です。
- 役員社宅の火災保険料を会社が負担するとどうなりますか?
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役員だけを対象に保険料を負担する場合は、その保険料に相当する額が役員への給与になります(所得税基本通達36-31の7ただし書)。役員社宅は家賃の計算も従業員とは別のルールです。詳しくは「役員社宅とは?」をご覧ください。
- 社宅の火災保険料はどの勘定科目で処理しますか?
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会社が契約して支払う保険料は、「支払保険料」などの科目で費用として処理するのが一般的です。保険料は消費税の非課税取引です。社宅にかかる費用の科目と仕訳は「社宅の経費処理まとめ」で整理しています。複数年分を一括で払う場合の処理は、顧問の税理士に確認してください。
- 地震による火災も火災保険で補償されますか?
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一般的な火災保険では、地震・噴火・津波を原因とする火災や損壊は補償の対象外で、補償を受けるには火災保険に地震保険を付ける必要があります。社宅の保険を用意するときは、地震保険を付けるかどうかもあわせて決めておきます。
本記事は、借り上げ社宅の火災保険に関する一般的な考え方を紹介したものです。保険の補償内容は商品ごとに異なり、課税の扱いは契約の形で変わります。個別の判断は、保険会社・代理店や税理士にご確認ください。内容は2026年10月時点の所得税基本通達(36-31の7・36-31の8・36-32)、民法、失火責任法によります。
まとめ
借り上げ社宅の火災保険は、大家への賠償(借家人賠償責任)・従業員の家財・第三者への賠償(個人賠償責任)の3つに分け、誰の責任・誰の財産かで加入者を決めると整理できます。借主である会社の責任に備える借家人賠償責任は、会社名義での加入が自然です。家財は従業員の財産で、会社が契約者として全員分をかけるなら給与課税しなくて差し支えない一方、従業員が契約した保険の保険料を会社が払うと原則として給与になります。扱いは社宅規程に書いておきましょう。社宅の手配や法人契約のご相談はお問い合わせフォームからどうぞ。
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