シェアハウス経営の収支は、一棟貸しより収入が増える一方で、一般賃貸にはない運営コストが乗るという構造をしています。個室ごとに賃料を得られるため満室時の収入は大きくなりますが、共用部の光熱費・インターネット回線・定期清掃・備品補充が毎月かかり、さらに退去が一般賃貸より頻繁に起こります。したがって満室想定の数字で判断すると必ず外れます。本記事では4室のモデルケースを使い、収入からコストを引いて手残りを出すまでの計算の順番を具体的に示します。
収入はどう変わるか:一棟貸しとの比較
まず収入面を見ます。以下は説明のためのモデルケースです。実際の賃料は立地・築年・設備によって、光熱費や清掃費はエネルギー価格や委託先によって変わります。
【モデルケース】東京23区・最寄り駅徒歩12分・築30年・4LDK(延べ面積95㎡)
| 一棟貸し(一般賃貸) | シェアハウス(個室4室) | |
|---|---|---|
| 賃料の考え方 | 地域の戸建て相場に連動 | 個室1室あたりの相場×室数 |
| 想定賃料 | 月12万円 | 月5.5万円×4室=月22万円 |
| 満室時の年収入 | 144万円 | 264万円 |
満室で比べると差は大きく見えます。ただしこれは入り口の数字にすぎません。ここからコストと空室を差し引いていきます。
なお築年数が古いほど、この差は開きやすくなります。一般賃貸では築30年の戸建ては相場が下がりますが、シェアハウスの入居者は初期費用の安さや立地を優先する傾向があり、築年数の影響を受けにくいためです。逆に築浅で一般賃貸としても十分に貸せる家であれば、わざわざ転用する必要はありません。
稼働率を織り込む
シェアハウスは入居期間が一般賃貸より短くなる傾向があります。単身者が中心で、就職・転勤・帰国などの節目で退去が発生するためです。年間を通じて満室が続くことはまれで、実務では稼働率を掛けて考えます。
| 稼働率 | 年間収入(満室264万円の場合) |
|---|---|
| 100%(満室) | 264万円 |
| 90% | 237.6万円 |
| 80% | 211.2万円 |
| 70% | 184.8万円 |
稼働率70%まで落ちると、一棟貸し(144万円)との差は40万円程度まで縮みます。シェアハウスの収益性は、稼働率をどこまで保てるかでほぼ決まると言えます。ここが運営力の差が出る部分です。稼働率と利回りの関係はシェアハウス投資の利回りの考え方で詳しく整理しています。
見落としやすい運営コスト
次に支出です。一般賃貸の感覚で計算すると、ここで狂います。シェアハウスでは入居者が個別に契約する費用を、オーナー側がまとめて負担する構造になるためです。
| 費目 | 月額の目安(4室規模) | 備考 |
|---|---|---|
| 共用部の電気・ガス・水道 | 2〜3万円 | 人数と季節で変動 |
| インターネット回線 | 5,000〜8,000円 | 全戸共用。速度不足は退去理由になる |
| 定期清掃 | 1〜2万円 | 週1回程度。共用部の維持に直結 |
| 備品・消耗品 | 3,000〜5,000円 | トイレットペーパー・洗剤など |
| 小計 | 月4〜6万円程度 | 年間48〜72万円 |
これに加えて、一般賃貸と同じく固定資産税・都市計画税・火災保険・修繕費がかかります。さらに運営を委託する場合は管理手数料が乗ります。
清掃費を削ると短期的には支出が減りますが、共用部が荒れると退去が連鎖し、結果として稼働率が下がります。シェアハウス共用部のトラブル対策で扱っているとおり、ここは削るべきでないコストです。
手残りを計算する
ここまでの数字をつなげます。稼働率90%、運営コスト月5万円、管理委託(賃料の10%)と仮定した場合です。
| 項目 | 年額 |
|---|---|
| 賃料収入(264万円×稼働率90%) | 237.6万円 |
| 運営コスト(月5万円) | △60万円 |
| 管理委託手数料(収入の10%) | △23.8万円 |
| 固定資産税・保険・修繕積立 | △25万円 |
| 手残り | 約128.8万円 |
一棟貸し(年144万円・稼働率100%・運営コストほぼなし・管理手数料5%として約122万円の手残り)と比べると、この条件では大きな差になりません。シェアハウスが有利になるのは、次のような場合です。
- 一般賃貸では借り手が付かない(築古・変形間取り・駅から遠いなど)
- 個室数をより多く確保できる(5〜6室なら収入の伸びが大きい)
- 稼働率を高く保てる運営体制がある
逆に、築浅で一般賃貸として普通に貸せる家を、わざわざ工事してシェアハウスにする経済合理性は乏しいということです。「儲かるかどうか」は物件によって答えが変わります。
初期投資と回収年数
収支が回るとしても、転用の初期投資を何年で回収できるかを見ておく必要があります。計算は単純です。
回収年数 = 初期投資額 ÷ 年間の手残り増加分
先のモデルで、一棟貸しの手残り122万円がシェアハウス化で128.8万円になったとすると、増加分は年6.8万円です。初期投資が300万円なら回収に40年以上かかる計算になり、この物件では成立しません。一方、一般賃貸では借り手が付かず収入がゼロだった家であれば、増加分は128.8万円となり、回収は2〜3年です。
つまり判断の分かれ目は「転用しなかった場合にいくら稼げるか」です。空室のまま放置している家ほど、シェアハウス化の効果が大きく出ます。初期投資の内訳は戸建てのシェアハウス転用費用の相場で項目別に示しています。
数字が読みにくい3つの要素
1. 賃料の設定
個室の賃料は、部屋の広さ・窓の向き・階数で同じ建物内でも差をつけるのが一般的です。全室同額にすると、条件の悪い部屋だけが埋まらず稼働率が下がります。
2. 空室期間の長さ
退去から次の入居までの期間が読めないと、年間収入がぶれます。募集チャネルの数と入居者層の広さがここに効きます。
3. 突発的な修繕
共用部は使用頻度が高いため、給湯器・エアコン・洗濯機などの故障が一般賃貸より早く来ます。年間の修繕費を多めに見ておくのが安全です。
収支を安定させる方法:借り上げという選択肢
ここまで見たとおり、シェアハウスの収支は稼働率という変動要素に大きく左右されます。この変動をなくす方法が、運営会社が物件を一括で借り上げて毎月定額の賃料を支払うサブリース(借り上げ)です。
借り上げの場合、満室時の収入より受け取る額は下がりますが、空室が出ても賃料は変わりません。先のモデルでいえば「稼働率90%で237.6万円」という変動する数字ではなく、確定した金額が毎月入る形になります。どちらが向くかは、収益の最大化を狙うか安定を優先するかで変わります。判断軸は管理委託とサブリースの違い(費用・リスク・収益で比較)に整理しています。
実際に収益化した築古物件の例
ここまでの試算は数字の話ですが、実際に「一般賃貸では貸せなかった家」が稼働している例を挙げます。




これらはいずれも、転用しなければ収入がゼロだった、あるいは大きく下がっていた物件です。本記事で示した「転用しなかった場合にいくら稼げるか」という判断軸が、そのまま当てはまるケースといえます。借り上げ・管理の実績はこちらで公開しています。
- シェアハウス経営は儲かりますか
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物件によります。一般賃貸では借り手が付かない築古・変形間取り・駅から遠いといった条件の家では、収入がゼロから生まれるため効果が大きく出ます。一方、築浅で一般賃貸として普通に貸せる家は、工事費をかけて転用しても手残りの増加が小さく、回収に長期間かかることがあります。
- 収支計算は満室で考えてよいですか
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いいえ。シェアハウスは単身者が中心で、就職・転勤・帰国などの節目に退去が発生するため、年間を通じた満室は現実的ではありません。稼働率を掛けた数字で判断してください。稼働率が70%まで落ちると一棟貸しとの差はかなり縮まります。
- 一般賃貸にはない費用には何がありますか
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共用部の電気・ガス・水道、インターネット回線、定期清掃、備品や消耗品の補充です。4室規模で月4〜6万円程度が目安になります。これらは入居者が個別に契約するのではなくオーナー側がまとめて負担するため、一般賃貸の感覚で計算すると収支が狂います。
- 初期投資は何年で回収できますか
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初期投資額を「年間の手残り増加分」で割って求めます。重要なのは、転用しなかった場合にその家がいくら稼げるかです。空室のまま放置している家なら増加分が大きく回収は早くなりますが、既に貸せている家では増加分が小さく回収年数が伸びます。
- 部屋数は多いほうが有利ですか
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収入面では有利です。個室数が増えれば賃料の合計が増え、1室の空室が全体に与える影響も小さくなります。ただし水回りの容量が追いつかないと生活の質が下がり、退去につながります。トイレは3〜4人に1つが目安です。
- 稼働率を高く保つには何が必要ですか
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募集チャネルの数と入居者層の広さ、そして共用部の維持です。募集経路が限られていると空室期間が長くなります。また共用部が荒れると退去が連鎖するため、定期清掃とルールの周知は削るべきでないコストです。
- 収入を安定させる方法はありますか
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運営会社が一括で借り上げるサブリースであれば、空室が出ても毎月定額の賃料が入ります。満室時の収入より受け取る額は下がりますが、稼働率の変動を負わずに済みます。収益の最大化より安定を優先する場合に適した方法です。
※サブリース(借り上げ)契約に関するご注意:契約期間中でも、経済事情の変動等を理由に運営会社からオーナー様へのお支払い賃料の減額を請求される場合があります(借地借家法第32条)。オーナー様からの中途解約には正当な事由を要する場合があるほか、免責期間・原状回復や修繕費の負担区分などの条件は、契約時に賃貸住宅管理業法に基づく重要事項説明で書面にてご確認いただけます。
まとめ
シェアハウス経営の収支は、次の順番で計算すると判断を誤りません。
- 個室数×想定賃料で満室時の収入を出す
- 稼働率(90%・80%・70%)を掛けて幅で見る
- 共用部の光熱費・回線・清掃・備品(4室で月4〜6万円)を引く
- 管理手数料・固定資産税・保険・修繕を引いて手残りを出す
- 初期投資÷手残りの増加分で回収年数を確認する
判断の分かれ目は「転用しなかった場合にいくら稼げるか」です。空室が続いている家ほどシェアハウス化の効果は大きく、普通に貸せている家では効果が限られます。
クロスハウスの無料診断でお伝えするのは、次の4点です。
- 転用の可否:法規制と建物条件から、シェアハウスにできるかどうか
- 想定される個室数と賃料:間取りと周辺相場から算出します
- 概算の初期費用:改修と設備でどの程度かかるか
- 借り上げの場合の賃料水準:当社が借り上げるとしたらいくらか
向かない物件の場合は、その理由もお伝えします。

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